口腔ケアの大切さ
健康な高齢者とは
高齢になれば、病気や障害から完全に逃れることは通常できません。また生理的老化によっても様々な問題が生じるものであり、避けて通ることはできません。
そのため、健康な高齢者とは、いくつかの病気や障害を抱えながらも日常の活動には何ら支障なく過ごすことができる人であると、まずは考えると良いでしょう。
人は誰でも年をとりますので、高齢者になった時に「病気や障害が全くない」ことが健康であると考えるよりも、多少の痛みや不都合な部分を感じながらも「いきいきと活動する=活動能力が高い」状態にあれば、健康であると言えます。
年を重ねるにつれ、様々な体の変化、病気や障害がおこったり、筋肉の衰えや痛みを感じたりすることで、活動範囲が狭くなりがちですが、そうならないように、活動範囲を自ら狭めてしまうことがないようにしたいものです。
人との交流
いきいきと活動をするために、重要なことのひとつに「人との交流」があります。交流の場は、あなたが必要とされる、役どころのある活動であったり、また、楽しく好きなことをして過ごす時間であったりすると思います。
こういった活動を積極的に行えば、人との交流が生まれます。人との交流を楽しくするためには、人とのコミュニケーションが大事であることは言うまでもありません。
人とのコミュニケーションで大事な「話す」という行為についても、実は、高齢とともに口腔機能が低下してくることにより、不都合が生じる場合があります。一番身近に感じることで言えば、多くの歯が抜けてしまうと、話しづらい。というようなことです。
構音障害
もちろん「話す」という行為に必要なものは、歯だけではありません。「構音障害」といって、声を発するために必要な体の器官に障害が起こることで、話すことがしづらくなる場合があります。
例えば、舌とか唇とか頬などの顔の筋肉であったり、筋肉を動かすための神経であったりが、何らかの原因によって病気になると、口のまわりの動き自体がうまくいかなくなり、音を作る事が難しくなります。
口や口の周り、喉などの動きが悪くなり、それによってはっきりした発音が出来ない場合とか、口がきちんと閉じられない場合とか、そのような状態になり、構音障害になることもあります。
つまり、普通に息を吸って吐くという呼吸が正常に出来なくても、舌がうまく動かなくても、唇が良く動かなくても、構音障害というのは起こってきます。
構音障害とまではいかなくても、なんとなく話しづらい、口がうまく動かない、そういう状態では、人と楽しく食事をしたり、コミュニケーションを図ることはできないのではないでしょうか。
口腔ケア
高齢者が「いきいきと活動する」ことに、関連性をもってあまり考えられていない「口腔機能」ではありますが、口腔機能の低下を防ぎ、維持すること、向上させることは、高齢者の自立した生活を促進することにつながります。
とりわけ「食べる」ことは、それ自体が生きがいになるとともに、社会とのつながりが徐々に薄れる高齢者にとって、誰かと食事を共にすることが人間関係を豊かにする場を提供する重要な機会でもあります。
逆に食事や会話に支障をきたすと、外出や人との付き合いが面倒になり、外出をしなくなるなど、いきいきとした活動からは離れて行ってしまいます。このように活動をしなくなることで、体力も低下しますし、脳も衰えてきます。結果、認知症になったり、寝たきりになったりすることも十分考えられます。
このようにならないために、元気な高齢者になるために、口腔ケアは欠かせないものであり、日ごろの簡単な運動やマッサージなど、少し意識して行うだけでも違いますので、是非この機会にその大切さを知っていただき、積極的に口腔ケアを行っていただきたいと思います。